共産党の隠れた企み(2)

中国の7-9月のGDP成長率が7.8%と発表された。

日経、ロイターなどもある程度裏をとっているようで、日経は独自調査で7.7%と推定。一方電力消費も13%増加とあるから、7.8%は信用できる数字のようだ。もちろん、7.8%には、仕掛けがあって 投資がそのうち4.3%を占めている。投資の大部分は以前から書いているように不動産と設備投資だ。住宅、オフィスビル、ホテルや港湾、工業団地を作り、企業の設備を増やせばその分GDPが増加する。

中国では企業や特定産業の投資案件は地方・中央政府の許認可が必要だ。勝手に投資することもできないし、一度認可をとった投資を途中でやめることもできない。企業が金が回らず投資をやめようとすると、2度と投資は認めない などと脅される。やむを得ず、無理とわかっていても投資する外国企業も多い。地方政府もノルマのGDP成長率を達成するための縛りは厳しい。

一方、投資を促進するため中央政府や地方政府、あるいは銀行が国営企業や共産党系の企業に低利で、あるいは無利子で設備投資資金を提供する。よく聞くのは国営で海外資本と合弁でない自動車企業の型投資資金をその地域の政府が提供するという制度だ。新モデルのために型を用意すると 小さな部品を作るのもいれてざっと2-3百億円必要だ。そのうちの国営企業負担分を政府が提供するのだから、外資合弁との競争上大変有利な制度だ。いま、10万元以下の中国ブランド車はそんな投資補助資金で成立している。ただ、だからと言って競争で勝てているわけではないが。

地方政府が提供する理由は、もちろん、経済成長である。地方政府は自分の地場の企業が成功してくれれば、GDPは増え、税収は増加し、購買力はあがる。自分の懐も含めいろいろなメリットがある。よその地方の自動車会社には、自分たちの市場では成功させない。はっきりとそうは言わないが、その代わり、いろいろな名目で資金援助を行い支援をする。地方政府にとっては正当化できる出費だ。

一方政府は外国からの投資も増やしたい。リゾート/シティーホテルやレストランには、華僑は抵抗無く投資をする。そのほかの産業、特に製造業については欧米、日本、台湾、韓国などがターゲットになる。この投資が危ない。

最近日本車の売れ行きが戻ってきたというニュースが入っている。ただ、売れているのは、広州を中心とした経済圏だ。広州自動車集団は、トヨタ、本田、三菱、日野などのブランドを抱えている。そこで広州の地方政府、共産党、人民解放軍が、その所有企業を中心にこれらのブランドを買わせている。トヨタのカムリ、本田のアコードクラスは国有企業や、共産党、解放軍所有企業が買っている。そのため、この暑い地方で、カムリクラスの車の色は9割近くが黒だ。

ただ、この方針は何時まで続くかわからない。おそらく自動車産業は広大な産業構造を持つため、それらの投資を増やすための撒き餌である。投資して、進出したあとには、反日デモのようなトラブルの発生と経営悪化、従業員のストライキ、メディアでのバッシング(昨日はスターバックスが叩かれている。以前はアップルが保証修理で叩かれた。)、賄賂の要求が起きる。なかなか巧く生き残るのは難しい。自動車会社本体は合弁で国営企業や地方政府の後ろ盾があり、そのようなことは起きにくいが、外資100%の会社では 利益をあげている会社ほど、ストライキ、当局の摘発、メディアやネットでのバッシングなど、毎年何かが発生する。

トラブルの後、撤退するときには 脅迫と資産の強奪が始まる。これはすでに知られている話なのでここには書かない。

日経は、「中国経済のバブルははじけない、なぜなら中国の現在の問題は日本の住専と似ているが、日本と異なり、政府に対して反対を唱える議会勢力が存在しない為、いくらでもお金をつぎ込める、銀行は破綻しない」とする。それは正しいが、破綻するのは銀行ではなく住専だ。住専が破綻するとつけを払うのは、銀行や地方政府ではなく、庶民とである、といままで書いてきた。ところが、最近はその犠牲を外資に求めているように見える。

先週 FT紙(ファイナンシャルタイムズ)に掲載された記事では 「実は今のGNPに占める個人消費13%は正しくなく46%だろう、なぜなら企業支出の中には家計消費が含まれているからだ」と書かれていた。そうであれば、GDPの成長を、投資だけでなく家計消費の拡大も支えていることになり、過剰投資によるGDP成長ではない可能性があると伝えている。

確かに今でも企業の多くは従業員のために独身だけでなく夫婦のための寮や住居も提供している。(昨年の日本企業や商店の焼き打ちが起きた時には、寮まで焼かれてしまい、作業服姿で焼け出された日本企業従業員もいた)食事も寮の食堂で、衣食住のうち、自費で負担するのはプライベートの時の衣料くらいだ。国営企業の企業モデルがそうだから、その名残である。

それでも家計消費はそんなにGDPを支えてはいない。これらの費用は企業の人件費に含まれるがもともと人件費が安いのもあり、製造業、サービス業では売上高比率で2-4%にとどまる。およそ家計がGDP成長をさせているようには見えない。

これからは、外国からの投資にGDPを支えさせ、その一方で数年後にはその外国からの投資を収奪する、というモデルが出てくると予想できる。それには、中国経済の暗部を見せるわけにはいかない。海外在住の中国人に対し、締め付けが始まっているのも経済情報の統制だ。中国人は、経済、特に統計に疎くうかつな発言や情報発信が中国の統計に疑問を抱かせることになる。それでは、外資は呼び込めない。

7-9月の成長率についても、相変わらず信頼はできないし、日本バッシングが終息したと考えるのは早計である。まだ、過剰な不動産投資のバブルがはじけるリスクは高い。李首相の現在の「地方政府債務と住宅投資は コントロールできている」という発言は、どこかの首相の似たような発言よりも信頼性は低い。なにせ習近平主席が「取り返しのつかない誤りをしてはいけない」と言っているくらいだからまだまだ「リスクは高い」と認めている。

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