薄熙来裁判、薄熙来の狙い

山東省の薄熙来の裁判が結審した。薄熙来は、検察との対決姿勢を明確にし、検察は反省が見られないとして厳罰を求めたが、実は共産党トップが集まって重要な決定事項について合意する北戴河会議で判決は既に決まっている。裁判で検察と対決しようと 起訴事実を認め、反省しようと判決は同じで、おそらく執行猶予付き死刑だ。

北戴河会議には、江沢民も出席しており、もし、判決を変えるのであれば、再度会議招集が必要だ。

薄熙来が 主な罪状である収賄、越権行為、横領のほとんどを否認したにもかかわらず、数少ない罪状を認めた一つに王立軍の成都米領事館駆け込みの隠蔽という越権行為がある。

これについて、薄熙来が「残念」と言っている一方「共産党の指導を仰いだ」とも証言している。 罪を認めているような姿勢を見せる一方、この件では中国共産党幹部に対し「越権で判断したのではなく、共産党の指示に従った行動」ということで、共産党幹部を巻き込む意思がある。

ここで言う「共産党」(の判断)とは、周永康とみられていて、薄熙来の証言以降、周永康と息子、周永康の周辺人物の重大な規律違反の摘発(中国石油の王永春、李華林両副社長と、子会社の中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)の幹部2人が拘束された)が行われた。狙い通り共産党幹部を巻き込んだが、実際 拘束されたのは彼の後ろ盾だ。

薄熙来裁判の最中に法輪功信者の臓器摘出・移植が一時、中国のミニブログ上で解禁となった。外国メディアの引用をしながら、団派は薄熙来が極悪非道の人間であることを印象付けようとした。ところが、在独中国大使館員の発言、薄煕来ドイツ訪問時に法輪功信者の臓器摘出は江沢民の指示だ、という発言が中国外のメディアで流れた。これは薄煕来側のリークの可能性が強く、もし厳しい追求があれば、江沢民も巻き込むという薄煕来の意思を見せている。

薄熙来の量刑は、執行猶予付きの死刑で20年間の収監が予想され、過去の例に倣うと時間も短くなりそうなのに、また、どのような抵抗をしようが変わらないのに、彼はなぜ、自分の後ろ盾をしてくれた共産党幹部を巻き込んでまで対決したのだろうか。

想像するに次の二つがある。
1)共産党トップを巻き込むぞと脅すことで、私財没収などをやめさせ自分の処分を有利にする(現実今は行われていない)
2)共産党指導部、特に自分の後ろ盾を政治的に追い込み、追い詰められた後ろ盾が政変をおこすことを期待している。(もちろん、もし政変が起きれば 薄熙来の否認は 彼のチャンスを増やす。)

2)の可能性が高い。もともと薄熙来は習近平の前の主席候補だったし、政変を起こそうとしていたと裁判の中で検察から嫌疑がかけられている。

薄熙来の後ろ盾は周永康、江沢民だったが、周永康は既に司直の手に掛かり、江沢民も腐敗撲滅のキャンペーンを受け分が悪い。それにもう高齢で、いつまで存在かなるまま政界に残れるのかわからない。もし、江沢民が批判されたり死亡すると、薄熙来のチャンスも無くなる可能性もある。また、江沢民は最近、習近平は優れた指導者という発言をして、習近平に従う姿勢を見せている。

今の主席習近平は、団派と上海閥と太子党の妥協の結果だ。上海閥と太子党はもともと薄熙来を主席候補としていたが、団派が認めていなかった。そして、王立軍の領事館駆け込みが起こり、薄熙来はそれに足を引っ張られたので、団派としては李首相を主席にしたいところを 上海閥、太子党が推す習近平で 共産党青年団は妥協した。習近平は団派と上海閥双方に頭が上がらない、というか、どちらか一方の言うことだけを聞いていれば済むとはならず、双方の言うことを聞いていなければいけなかった。

最近は、それが変化している。上海閥に近く、太子党の中核である薄熙来が裁判にかけられ、裁判後は周永康と中国石油の共産党高級幹部が複数取り調べられている。江沢民は、逮捕されていないが、彼の一派は容赦なくどんどん、取調べされているし、法輪功の臓器摘出は、江沢民の指示だと言う情報もリークされた。

習近平は、団派に取り込まれている一方、そのあと踏みとどまったのが、人民解放軍を中心とする太子党だ。最近 習近平が空母を訪問するというイベントがあった。それも8月15日前後で日本を圧迫するために出航したばかりの空母を大連に呼び寄せた。大連は薄熙来の地盤の一つだ。習近平は薄熙来が下獄したあとに薄熙来の正当な後継者であることを人民解放軍に示している。

はっきり見えてこないが、団派と人民解放軍に関しては、妥協点を探る動きがあるようだ。
実は、中国の利財商品といわれる規制外の「影の銀行(シャドーバンキング)」は、不動産投資が多く、信用収縮が起きれば多大な不良債権を発生させるが、ここに大量に金を貸し込んでいるのが不正蓄財をしてきた人民解放軍の幹部だ。

金利上昇、銀行の貸し出し基準厳格化、貸金回収、不動産価格暴落などで 「影の銀行」がつぶれたり回収不能債権を発生させたりすることは、習近平と、特に彼を取り込もうとしている団派に対して、人民解放軍が叛旗を翻す可能性があるので、習近平は 最近2件目不動産購入条件を緩和、銀行ローンも認める一方、金融では金利上昇で不適切な貸し出しを減らす効果があるにもかかわらず、李首相は金利上昇を容認しなかった。この間に人民解放軍は金の回収を急ぎ、「影の銀行(シャドーバンキング)」が破綻するときは庶民がかぶるようになっている。これが双方の妥協案だ。これをもって李首相は、コントロール可能と言っている。庶民は金が焦げ付いて泣こうが喚こうが、不安定勢力にはならずコントロール可能と見ているのだ。

最近の中国石油高級幹部の調査は習近平の政敵潰しと言われているが、実際は人民解放軍と団派の戦いになってきていた。さらにここにきて、人民解放軍と団派が手を結んでいるので、団派と上海閥の戦いとなってきていて、実際上海閥は敗退を続けている。習近平が団派に自由に操られる日も近い。習近平は、薄熙来ほど、鋭く先鋭的ではないから、そうなっても問題はない。ただ、太子党と上海閥の不満は積もる。

これは中国共産党内部の権力闘争だが もし大きな政変に発展し、デモや暴動が発生すると 一般の共産党員やそれ以外の民衆の支持も大きな意味を持つ。江沢民が薄熙来をカバーし続けるのは薄煕来が持っているこの「人気」や「支持」に魅力があるからだ。薄熙来と江沢民はこの一発逆転にかけている。

最近は、公安が民衆に袋叩きにあうケースが増えている。ウイグルや、チベットでは反政府活動も頻発している。公安を握っていた周永康への反発もあるが、比較的リベラルな団派の統治が、この政情不安を抑えられるかどうか、問われている。

結局 薄熙来の狙いは、共産党のトップと共産党員は すべて薄熙来や周永康と同じ穴の狢、共産党をつぶさないと「駄目」だと思わせ 民衆に大きな騒乱を起こさせること に見える。一旦起きれば、政変を抑えるために解放軍や、公安が活躍し、薄熙来の支持者が薄熙来の過去の成功をたたえることで、薄熙来や周永康がまた復活する素地を作ること、だ。



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